ソーシャル・プロジェクトマネジメントが必要(その2)
◆ソーシャル・プロジェクトとは
PMI日本支部の報告 (2011年の3.11 東日本大震災を発端に、さまざまな団体、個人が復興支援に携わっている活動をPMI日本支部がマネジメント面からサポートしてきた。) によれば、
復興支援プロジェクトの多くで、
- 異なるニーズ/優先順位を持つ様々なステークホルダーが登場する。また、ビジネスの場面以上にステークホルダー間での考え(思い)が異なることが多い。そのため、計画通りに進まない。
- 初期の目標・スコープは曖昧で、手当たり次第にやることになる。
- プロジェクトメンバーの活動意欲(例えば自治体職員、被災者、ボランティア)も多様で、目標・計画に一致団結して進めるとは限らない。
- 制約が多く、不確実性が高く、プロジェクトの特性も複雑で、リソースは限られており、ビジネスとは異なるタイプのリスクを伴う。
- 計画よりもアクション重視で、問題が発生すればその都度、対処療法に追われる。
- 問題解決が困難だと安易に妥協してしまい、成果にスコープクリープが発生している。
- 成果の測定基準が曖昧で、プロジェクト活動がフェードアウトする。
- 人・物・金・時間の制約条件の下で活動の成果物を出そうと焦ってしまう。
- 災害復興は単一のプロジェクトで行えるものではない。時間経過とともにさまざまなプロジェクトが立ち上がり、関連性を持ってくる。しかし、とても他のことまで気が回らない。
- 活動の中心の専門家が忙しすぎて、あるいはプロジェクト内外の問題・課題が広範囲にまたがりすぎて、専門家がコーデネイトする余裕がない。
- などなど
という問題が生じたそうです。
つまり、ソーシャル・プロジェクトには、私たちが企業で展開する製品開発やソフトウェア開発などのプロジェクトとは明らかに異なった特徴があることが分かります。
◆ソーシャル・プロジェクトをさらに抽象化する
ソーシャル・プロジェクトは成果物、サービス、所産を生み出せばよいというものではありません。 私たちの社会は、今までの技術主導や経済性主導から人間の感性主導の社会に移行してきています。
ですから、ソーシャル・プロジェクトはあらゆる側面で感性的な観点が重視されるとこが大切です。
このような状況を考えたとき、ソーシャル・プロジェクトにPMBOKガイドのプロジェクトマネジメント手法を展開しても現場は混乱するばかりで、適切ではありません。
◆ソーシャル・プロジェクトマネジメントの課題
復興支援プロジェクトの問題から伺われるマネジメントの課題は以下のようです。
(数字は前出の問題の項番)
・ 多様なステークホルダーのベネフットをマネジメントする (1/3)
・ 前提条件がどんどん変わっていくリスクマネジメント (4)
・ 柔軟な計画の修正、素早い成果の提示と評価 (6)
・ 他のプロジェクトとの連携やバランス (9)
・ 曖昧な初期の目標・スコープでもとにかく走る (2/5/7/8)
・ 専門家を支援するコーデネイター (10)
このような課題を考えたとき、ソーシャル・プロジェクトにおいては、
・ 方法論として、プロジェクトマネジメントの他にも、アジャイルマネジメント、プログラムマネジメント、ポートフォリオマネジメントを取り入れ
・ あらゆる面で人間の感性的な観点の重視
・ 専門家を支援するコーデネイター的なソーシャル・プロジェクトマネジャー
が、各種プロジェクトのマネジメントすることの重要性に気が付きます。
つまり、適切なマネジメント手法=ソーシャル・プロジェクトマネジメントの導入が必要だということなのです。
続く
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